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第19回高校生模擬判選手権関東大会優勝に寄せて(https://chusugi.jp/reports/18105/)

  • 執筆者の写真: F I
    F I
  • 1 日前
  • 読了時間: 5分

 中央大学杉並高校模擬裁判チームの皆さん、このたびの第19回高校生模擬裁判選手権関東大会優勝、本当におめでとうございます。


1 はじめに 

 支援弁護士として皆さんの準備に関わってきた一人として、優勝という結果を心から嬉しく思います。同時に、今回の結果は、大会当日の出来だけで得られたものではなく、そこに至るまで皆さんが繰り返してきた検討、試行錯誤、そして「なぜそう言えるのか」を徹底して考え続けたことの積み重ねによるものだと感じています。

 今回の事案では、複数の物的証拠から被告人の行動を推認し、それらを一つのストーリーとして裁判官に示すことが求められました。 目撃者の供述一つをどう評価するかという事件とは異なり、一つひとつを見れば決定的とはいえない事実を組み合わせて、「だからこの事実が認められる」「だから有罪、あるいは無罪と判断すべきである」と論証しなければならない難しい課題だったと思います。

 その中で、特に印象に残っている点が三つあります。


2 三段論法

 第一は、論告・弁論がきちんと三段論法になっていたことです。

 裁判では、「私はこう思う」「こちらのストーリーの方が自然だ」というだけでは人を説得することはできません。どのようなルールや経験則を前提とするのか、その前提に証拠から認められるどの事実を当てはめるのか、そして、そこからどのような結論が導かれるのか。この大前提、小前提、結論の関係を明確にすることが重要です。

 皆さんの論告・弁論は、単に証拠を順番に紹介するものではありませんでした。「この事実から何がいえるのか」「それは次の事実とどう結びつくのか」「それらを合わせるとなぜ最終的な結論につながるのか」が整理されていました。主張と証拠、そして結論との距離が近く、聞く側が論理を追うことのできる構成になっていました。これは実際の法廷でも最も大切な技術の一つです。


3 事実を積み重ねた尋問

 第二は、尋問が「事実を前提に、さらに次の事実を積み重ねる」ものになっていたことです。

 良い尋問は、聞きたい結論をいきなり証人に尋ねるものではありません。まず動かし難い事実を確認し、その事実を土台として次の質問をし、その回答をさらに次の質問の前提にしていく。その積み重ねによって、最後には聞き手である裁判官自身が「そうすると、こういうことになる」と理解できる状態を作ります。

 皆さんは、この構造をよく理解していました。一問一問を単独で見れば地味に見える質問でも、それを順番に重ねることで意味が生まれる。相手から欲しい言葉を無理に引き出すのではなく、認められる事実によって結論に近づいていく。そこに今回の尋問の強さがありました。


4 卓越した想像力

 そして第三は、何よりも皆さんが「現場を想像できていたこと」です。

 リンク先の記事にもあるように、事案に似た状況を実際に確認し、状態を再現してもらうなど、皆さんは証拠を紙の上だけで考えませんでした。

 事件が起きた場所では、人はどこに立っていたのか。そこから何が見えるのか。どのように見えるのか。その身体状況ならどのような行動をとるのか。時間の流れに沿って考えたとき、そのストーリーは本当にあり得るのか。

 こうした想像力は、法律とは一見遠いもののように見えて、実は非常に重要です。裁判の記録には文字しか残っていなくても、実際の事件は実際の空間の中で、時間の経過とともに起きています。証拠からその場面を具体的に再現し、「本当にこんなことが起こるだろうか」と考える。その姿勢があったからこそ、皆さんの主張は机上の論理ではなく、現実感を伴った説得力のあるものになったのだと思います。

 もちろん、優勝にはチーム全員の努力があります。大会直前までほぼ毎日、証拠からどのようなストーリーが描けるのかを議論し続けたのを見てきました。 一つの疑問が出れば立ち止まり、別の可能性があればもう一度考える。その作業を最後まで妥協せず続けたこと自体が、今回の結果につながった最大の理由でしょう。


5 結びに

 今後、皆さんが法曹を目指し法学部等で法律を学ぶことがあるかもしれません。実は法律を学ぶことは条文や判例を覚えることだけではありません。事実を正確に見ること。その事実から何が言えて、何はまだ言えないのかを区別すること。そして、自分とは異なる立場からも事件を見直すことです。

 皆さんは今回、検察側と弁護側の双方を担当しました。 同じ証拠を前にしても、立場が変われば見え方が変わる。その双方を真剣に考え抜いた経験は、優勝という結果以上に、これからの皆さんに残るものだと思います。

 今回身につけた、論理を組み立てる力、事実を丁寧に積み上げる力、そして文字の向こう側にある現場を想像する力は、法律の世界に限らず、これから皆さんが様々な問題を考えるときの大きな力になるはずです。

 さらに、皆さんの結果がわからなくとも全力で取り組む力は素晴らしいものでしたし、法曹に値する素晴らしい資質を見せてもらえました。

 また、皆さんと一緒に事件について考え、議論できたことを、支援弁護士として大変嬉しく思っています。私自身が皆さんのおかげで自分自身学びを得られたことも多くありました。ありがとうございます。

 改めて、関東大会優勝、本当におめでとうございます。


第二東京弁護士会 支援弁護士 今田

 
 
 

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