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日の丸君が代訴訟結審期日の報告

  • 執筆者の写真: F I
    F I
  • 3月25日
  • 読了時間: 4分

2025年3月25日に日の丸君が代訴訟の結審期日があり最終弁論を行いました。

私からは以下の要旨で意見陳述を行い、手続的側面からもこの事件の違法性の大きさと不当性について裁判所に訴えました。


1 地方公務員に対する行政処分についても適正手続の要請があること 

 地方公務員にも、適正手続の要請が求めるられるのは、手続が現に行われている以上、当然のことである。手続の適正が求められる趣旨は、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服申立てに便宜を与えることにある。

 したがって、適用除外規定があれど、行われた手続に適正手続の趣旨が及ぶのは当然である。

 具体的には、地方公務員に対しても、告知・聴聞、理由付記の手続においても手続適正の趣旨は妥当し、それに沿った手続が履践されなければならないということである。

2 告知・聴聞手続について

  告知・聴聞について、本件では、事前の聴取手続としても行われておらず、弁護士の同席という当然の権利も都教委側は認めることはなかった。

  告知聴聞も不利益処分の名宛人が防御のための準備と反論の機会を得ることを保障するためのものである。不利益処分において公正な手続という点では、事前に理由を示し反論の機会を与えるというのは、証人尋問で岡田正則も明らかにしたように「行政法の初歩の初歩」であり、「どんな不利益処分でも、たとえ程度が軽くても、手続的な保障というのはあってしかるべき」ものである。

  この意味は、不利益処分を課す前提の手続で処分の内容が決まっている前提で告知・聴聞手続は行わないという当然の前提も含んでいる。

  処分内容が決まっているのであれば処分通知の手続きであり、処分の軽重を考慮することはあり得ない。

  また、事前の調査手続があったとしても、行政調査は調査手続にすぎず権利保障のために行われるものではない。口頭での水かけ論となることを防止し、不服申立ての便宜を図ること等を目的とした権利保障のために存在する告知・聴聞手続と同一視又は補完する関係にはない。

3 理由付記法理について

 理由付記法理についても手続適正の趣旨が及ぶことは、古くからの判例が確立している趣旨である。実際に行われた手続について行政手続法上の適用除外を理由に手続適正の趣旨を履践しない手続を行ってよいとすることは、手続という手段そのものへの背理である。

 そして、いかなる内容について理由の付記が求められるかについては(a)処分の根拠となる事実、(b)適用法令、(c)当該法令に当該事実関係を当てはめた結果として処分の判断となることに関する「処分の相手方から記載自体から了知しうる」程度の記載が要求されます。

 本件の各処分について見ていくと、「違反する」との記載はあっても、なぜ戒告なのか、なぜ減給なのか、具体的に本どの事実をどの条文に当てはめると、なぜその処分を行うのかの記載が全くなく当該法令に当該事実関係を当てはめた結果として本件で言えば懲戒処分となることに関して「処分の相手方から記載自体から了知し」えない記載しかされていないもので理由付記の違法がある。

 さらに、減給処分が取り消された後、更に再処分をしているケースでは、再処分においては取消判決の趣旨に即した処分が求められるところ、取消判決の趣旨からからどのようにして当該処分になったのかは、おろか両処分説明書は一言一句変わらない、同一の記載となっている。処分に取消判決をどのように踏まえたのかの説明には一切なっていない。処分内容を変えるのになぜ処分内容を変えるのかが記載されていないもので「処分の相手方から記載自体から了知し」えない記載であり理由付記の違法があり取り消されるべきものである。

 また、被告は訴訟経緯その他事情から「了知しうる」かの主張をするが、そのような事実は各原告らの尋問からもわかる通り存在せず、「記載自体から」という文言の趣旨からも外れた主張である。

 さらに、判例は不服申立ての便宜等から記載自体を求めているのであり、記載外の事情をあったかなかったかと水掛け論がごとく主張することになるのを防止する趣旨である。

4 まとめ

 本件は、特に手続面については、ここまで述べてきたように特殊な訴訟経緯のある事件であるないに関わらず、最低限、行政庁として当然に、履践されていなければならない手続すら行われていない杜撰なものである。

 被告が如何に処分に際して、被告がその妥当性や違法性について検討することなく、本来の行政庁として行うべき懲戒権とかけ離れた理由で処分を行っていたかを示すものに他ならない。

 少なくともこのような、処分の理由について明示も説明もできない、ないし、説明をする気もない不利益処分を許容・看過することは国民に対する信用失墜行為であり、裁判所には、手続的な違法があり処分が無効であるという当然の判断を求めるものである。


判決期日は2025年7月31日に指定されていますので、裁判所がこの事件にどのような判断を下すのがご注目ください。

 
 
 

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