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弁護士を志した事件について

  • 執筆者の写真: F I
    F I
  • 2月24日
  • 読了時間: 3分

更新日:3月7日

1 さて、自己紹介もかねて、弁護士を目指すようなったきっかけとなった事件について少し書いていきたいと思います。


私が、小学生のころに、我が国では、国旗国歌法が制定され国旗を「日の丸」、国歌を「君が代」と定めました。これに伴い音楽の授業に「君が代」が使われるようになりました。そして、私が歌うことを拒んだことによって、担任の教員と個別の面談があり、「なぜ歌えないのか」と詰問される事態になってしまいました。


この頃の私が、今の様に、人は人より偉くはなれないのであるから、人の上に神や王という存在を造ることは許されず、あまつさえ現人神の賛歌を歌うことはできないという信念を持っていたわけではありません。この頃の私にとっては、革新系の両親の影響から何となく「日の丸君が代」というものに良い印象を持っていなかったという認識にすぎなかったように思います。そのため、この問題はどちらかといえば、私自身の問題というよりは20年以上続く母の裁判闘争としての問題という認識が私の中にはあります。当時、都立高校の教員であった母が、起立斉唱しなかったことにより、処分を受けたという報告を聞き、困惑しました。なぜ起立斉唱をしないことで処分をされるのか理解できませんでした。


2 そして、裁判闘争に発展していったこの問題は、19条の思想良心の自由を大きな争点として争われていきます。


賛歌を歌い、シンボルに敬意を示す行為をなぜ強制することができるのか、憲法19条は踏み絵に見られるように、思想・信条の弾圧によって人権が大きく侵害されてきた歴史を現した条文であったはずです。


「本件各職務命令は、特定の思想を持つことを強制したり、これに反対する思想を持つことを禁止したりするものではなく、特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。」とし、卒業式における起立斉唱行為について「一般的、客観的に見て、これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり、かつ、そのような所作として外部からも認識されるものというべきである。」とした最高裁の多数意見は未だに理解できません。


「一般的客観的に見て」、すなわち、多数の者の認識が宗教性を意識していないから、賛歌を歌い、シンボルに礼拝する宗教行為そのものを特定の思想の告白にならないという発想が裁判所にはあったといえます。


多数の人にとっての日常や慣習になることを目的とする宗教と相いれない発想である上に、多数者であっても侵せない人権があるという憲法の精神も忘れ去ってしまったのでしょう。アメリカで大統領が就任後、聖書に手を当てて演説をします。この行為に宗教性がないと思う人はいないでしょう。なぜ、我が国では宗教性を忘却してしまうのでしょうか。国際的な儀礼で国として大事なものだという人もいます。大切なシンボルで儀式だというならそのシンボルの意味も、歌の意味も、よく考えて行動すべきでしょう。なぜ多くの人から透けて見える実質的な理由である国が決めたからという以上の理由は出てこないのでしょうか。


3 人権を侵害する側が多数派である場合、「みんながやっている」「当たり前」「普通のこと」という言葉が必ず踊ります。


人類の歴史において、かつて、人が平等でないことも、性差によって差別があることも「みんながやっている」「当たり前」「普通のこと」でした。この「みんながやっている」「当たり前」「普通のこと」がどれだけ人を傷つけるのか私たちは考えていかなければなりません。


そして、私は、漫然と考えず知らずにいたが故に人権を踏みにじってきた歴史も、そうして自分自身が何かを踏みにじっていくことが許せないのです。


あと少し考えていられたならと後悔しないために弁護士になり、あと少し考えなければならないと弁護士として走り続けて行けたならと思っています。


 
 
 

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